ベトナム各地で生活基盤を支える「Thien Tam基金」|活動内容と参加・支援方法まとめ

ベトナムでは、経済成長が続く一方、経済的に厳しい家庭や自然災害の被災者、医療・教育へのアクセスに課題を抱える人々への支援が求められています。生活を立て直すためには、一時的な資金や物資の提供だけでなく、教育や医療、生計確保などを含めた中長期的な支援も重要です。

こうした幅広い社会課題に向き合っているのが、ベトナムの複合企業「ビングループ(Vingroup)」が設立・資金提供する非営利組織「Thien Tam(ティエン・タム)基金」です。2006年10月に活動を開始し、社会福祉や教育、医療、農業、災害復旧、生活インフラなど多岐にわたる分野で事業を展開してきました。

本記事では、Thien Tam基金の主な活動内容や支援への関わり方、これまでの実績について紹介します。

目次
  1. Thien Tam基金とは?
  2. Thien Tam基金の取り組み紹介
      1. 1.生活支援と貧困対策
      2. 2.教育・人材育成支援
      3. 3.医療・健康支援
      4. 4.農業・生計支援
      5. 5.災害復旧と生活インフラ支援
  3. Thien Tam基金への参加・支援方法
      1. 支援プログラムへの参加
      2. 慈善プログラムへの寄付
  4. Thien Tam基金の実績と信頼性
  5. 基本情報・問い合わせ
  6. まとめ

Thien Tam基金とは?

Thien Tam基金は、Vingroupが設立・資金提供する非営利の慈善団体です。2006年10月3日に設立され、人道・慈善活動を通じて地域社会を支えることを目的としてきました。

活動分野は、功労者への支援、社会福祉・貧困対策、文化、教育・人材育成、医療・健康、農業・環境、災害・感染症への対応、生活インフラ整備、慈善・職業訓練施設の運営という9分野に及びます。

支援の特徴は、緊急時の援助だけに限定せず、教育機会の確保や農業を通じた生計づくり、道路・橋・水道などの整備にも対象を広げている点です。全国の行政機関や関連団体などと連携しながら、地域や対象者の状況に応じた事業を進めています。

Thien Tam基金の取り組み紹介

1.生活支援と貧困対策

Thien Tam基金は、経済的に厳しい家庭や高齢者、障がいのある人、孤児などを対象とした生活支援を行っています。支援先には個人だけでなく、孤児や高齢者らを受け入れる福祉施設も含まれます。

2025年にVingroupが公表した活動実績では、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で孤児となった1,200人以上の子どもに生活費を提供したほか、単身者や障がいのある人など1,000人以上を支援しています。さらに、孤児や障がい者、身寄りのない高齢者らを受け入れる50以上の福祉施設に対して、毎月の支援を続けてきたとしています。

2.教育・人材育成支援

教育分野では、経済的な事情を抱えながら学業に励む児童・生徒・学生への奨学金支援を続けています。代表的な事業が、2012年に始まった「Hoc Bong Vingroup(ビングループ奨学金)」です。2022~2023年度には、当時の63省・市すべてと連携し、特に厳しい家庭環境にありながら優れた学業成績を収める児童・生徒・学生へ約8,000件の奨学金を提供しました。2012年の開始以降、同プログラムによる奨学金は延べ4万9,000件に達しています。

奨学金の対象者を決める際には、推薦書類だけで判断するのではなく、基金の担当者が家庭を訪問し、生活状況や学習状況を確認するケースもあります。学び続けるために必要な支援を、家庭環境も踏まえて届ける仕組みです。

3.医療・健康支援

Thien Tam基金は、医療を受けることが難しい人への診療や治療支援にも取り組んできました。2019年には各省・市の赤十字組織と協力し、当時の全国63省・市のうち57省・市で、経済的に厳しい住民を対象とする無料診療・医薬品提供プログラムを実施しました。基金は同プログラムで17万セットの無料医薬品を用意しました。

治療費の負担が大きい患者を対象に、臓器移植など高度な医療にかかる費用を援助した事例も確認できます。無料診療や医薬品の提供だけでなく、専門的な治療を必要とする患者にも対象を広げています。

4.農業・生計支援

生活困窮世帯が継続的な収入を確保できるよう、農業を活用した生計支援も進めています。例えば、ハウザン省では、貧困世帯や生活に困難を抱える家庭に資金を提供し、家畜の飼育など新たな収入源づくりにつなげた事例があります。基金から500万VND(約3万円)の支援を受けた家庭が鶏やアヒルの飼育を始め、販売収入を得られるようになったケースも公表されています。

また、2023年からカインホア省カムラン市で進められた高技術海面養殖モデルでは、10世帯にHDPE製の円形いけす16基と角形いけす12基を提供しました。水中カメラや位置情報システムなども導入され、従来型の木製いけすとは異なる養殖方法の実証につながりました。

5.災害復旧と生活インフラ支援

台風や洪水などの災害時には、緊急援助に加えて、被災後の生活再建や公共施設の復旧にも資金を充てています。2024年9月に台風ヤギがベトナム北部を襲った際には、ラオカイ省バットサット地区にある中学校・高校の寄宿舎が、豪雨に伴う土砂崩れで全壊しました。Thien Tam基金は現地行政と連携し、遠隔地から通う500人以上の生徒が再び寄宿生活を送れるよう、5階建て・30室の新しい寄宿舎の建設支援を進めました。

基金がこれまでに支援した生活インフラには、道路や橋、安全な水を供給する設備などもあります。

Thien Tam基金への参加・支援方法

Thien Tam基金はVingroupからの資金提供を基盤に活動しており、公式サイトでは常設の寄付窓口は確認できません。一方、災害支援などの特定の慈善プログラムでは、個人や団体が寄付やイベント参加を通じて支援に関わる機会が設けられています。

支援プログラムへの参加

Thien Tam基金では、実施するプログラムに応じて、一般の参加者がチャリティーイベントなどを通じて支援に関わる機会があります。

2024年9月には、Vingroupが台風ヤギの被災地支援を目的に、慈善プログラム「Gieo Mam Thien Tam(ジエオ・マム・ティエン・タム)」を実施しました。同プログラム名には「善意の種をまく」という意味があります。Thien Tam基金の専用口座などを通じて寄付を募ったほか、チャリティーバザーやウォーキング・ランニングイベント、音楽イベントも開催されました。同プログラムで集められた寄付金は、被災地域の学校施設の再建などに活用されました。

慈善プログラムへの寄付

Thien Tam基金では、災害支援などの特定の慈善プログラムにおいて、個人や団体から寄付を募る場合があります。

「Gieo Mam Thien Tam」では専用口座が設けられ、個人や団体から寄せられた寄付金が、被災地域の学校再建や生活復旧に充てられました。また、同プログラムでは寄付金に関する情報を専用サイトで公開する仕組みも設けられています。

Thien Tam基金の実績と信頼性

Thien Tam基金は2006年の設立以降、ベトナム全土で活動を継続してきました。公式発表によると、2025年11月までに全国34省・市で活動し、支援を受けた人は累計1,000万人を超えています。

2025年8月には、長年にわたる社会福祉・人道分野への貢献が評価され、ベトナム国家主席から労働勲章一等を授与されました。同年12月には「ASEAN農村開発・貧困撲滅賞」を受賞しています。さらに、ベトナムのコミュニティ活動を表彰する「Human Act Prize(ヒューマン・アクト・プライズ)2025」では、最高部門に選ばれました。

Vingroupの2025年12月の発表によると、2006年から同年11月までに社会福祉・人道プログラムへ投じた資金は、約32兆VND(約1,940億円)に達しています。教育や医療に加え、農業や生計支援、道路、橋、水道などにも活動領域を広げてきました。

基本情報・問い合わせ

まとめ

慈善活動では、目の前の困難に対応するだけでなく、支援を受けた人がその後の生活を立て直せるかという視点も欠かせません。Thien Tam基金は約20年にわたり、社会福祉や教育、医療をはじめ、生活に関わる幅広い分野で活動してきました。

全国規模で事業を展開する基金にとって、地域ごとに異なる課題を把握し、必要とされる支援につなげることも重要です。行政機関や関係団体と連携して各地で事業を進めてきたThien Tam基金の活動は、企業が持つ資金やネットワークを社会支援に活用する一つの事例といえます。

社会課題が多様化するなか、一時的な援助を自立や地域の再建へどうつなげるかという視点は、慈善活動のあり方を考えるうえでも重要になっています。