ベトナムでは、居住地域や家庭の経済状況によって、子どもたちが利用できる教育機会に差が生じることがあります。特に山間部や少数民族の居住地域、島しょ地域では、学費だけでなく、通学や生活にかかる費用、教育施設の整備なども就学を支えるうえで重要な課題です。
こうした地域の子どもや若者を教育面から支えているのが、ヴー・アー・ジン奨学基金(Quy Hoc Bong Vu A Dinh)です。1999年に設立され、奨学金の給付に加えて、中学・高校から大学までを視野に入れた長期的な教育支援や、学校・道路・橋などの整備にも活動を広げてきました。
本記事では、ヴー・アー・ジン奨学基金の活動内容や参加・支援方法、これまでの実績について紹介します。

ヴー・アー・ジン奨学基金とは?
ヴー・アー・ジン奨学基金は、少数民族の学生を支援するため、ホー・チ・ミン共産青年同盟中央書記局の決定により1999年3月5日に設立された基金です。新聞社「Thieu Nien Tien Phong(ティエウ・ニエン・ティエン・フォン)」の提案をきっかけに発足し、ベトナムの少数民族出身の英雄ヴー・アー・ジンの名を冠しています。基金の会長は、元ベトナム国家副主席のチュオン・ミー・ホア氏が務めています。
設立当初から、経済的に困難な状況にありながら学業や生活態度に優れた少数民族の学生を主な対象としてきました。その後は活動の幅を広げ、単年度の奨学金だけでなく、進学を長期的に支えるプロジェクトも展開しています。
ヴー・アー・ジン奨学基金の活動紹介
1.少数民族や島しょ地域の学生への奨学金

同基金では、少数民族の学生を対象とした奨学金を継続的に給付しています。基金の規約では、各地域の青年団体と教育当局などが候補者を選定し、基金の運営委員会による審査を経て奨学金を給付する仕組みが定められています。
その後、支援対象は少数民族の学生だけでなく、島しょ地域の学生や、海上で任務にあたる軍関係者・漁業従事者の子どもなどにも広がりました。2014年には、島しょ地域の子どもへの奨学金給付や軍関係者の家族への支援などを行う「Vi Hoang Sa – Truong Sa Than Yeu(ホアンサ・チュオンサを愛するために)」クラブが設立されました。2025年には、同基金と同クラブを通じ、少数民族や島しょ地域などの学生を対象に計6,714件の奨学金を給付しました。
2.進学を長期的に支える教育プロジェクト

同基金は2009年以降、奨学金の給付と並行して、中学・高校から大学まで継続的に学生を支える複数のプロジェクトを進めてきました。代表的なものに、「Uom Mam Tuong Lai(未来の芽を育てる)」、「Chap Canh Uoc Mo(夢に翼を)」、「Mo Duong Den Tuong Lai(未来への道を開く)」、「Ho Tro Sinh Vien(学生支援)」があります。Uom Mam Tuong Laiでは、少数民族や島しょ地域などから選ばれた生徒に、ホーチミン市やカントー市の協力校で学ぶ機会と、学費や生活費などを含む全額奨学金を提供しています。2025~2026年度までに、32の民族に属する695人の生徒が同プロジェクトの支援を受け、協力先は22校と5社に上ります。
Chap Canh Uoc Moでは、家庭の経済状況が厳しい少数民族の学生に対し、企業や個人の支援を活用して毎月の学習・生活費を補助しています。大学生を対象とするHo Tro Sinh Vienも設けられています。また、「VinaCapital Foundation(ヴィナキャピタル・ファウンデーション)」と連携するMo Duong Den Tuong Laiでは、経済的な理由から中途退学の可能性がある少数民族の女子学生を対象に、学費や生活費などを長期的に支援しています。
3.学校や地域の教育環境の整備

子どもたちが学び続けるためには、奨学金だけでなく、学校や通学環境などの基盤も欠かせません。同基金は「Thap Sang Tuong Lai(未来を照らす)」を通じ、経済的に厳しい山間部や遠隔地域を中心に、学校、道路、橋、水道設備などの整備を支援してきました。
2024年に公表された15年間の長期支援事業の実績では、5つのプロジェクトを通じて1,737人の学生を支援したほか、20校の学校・分校、2カ所の給水施設、通学に利用される道路7本、農村部の橋40本を整備したと報告されています。奨学金による個人への支援と並行して、地域の教育環境そのものを整備してきた点も特徴です。
ヴー・アー・ジン奨学基金への参加・支援方法
寄付による支援
ヴー・アー・ジン奨学基金は、国内外の個人や団体、企業から資金や物資を募り、奨学金や教育支援事業に活用しています。基金の規約にも、組織・個人から寄せられる寄付を活動資金として受け入れることが定められています。
公式サイトには基金名義の銀行口座が掲載されており、寄付を通じた支援が可能です。
企業・団体による協力
企業や団体は、奨学金への資金提供に加え、長期教育プロジェクトへの協力などを通じて活動に関わることができます。
実際にUom Mam Tuong Laiをはじめとするプロジェクトでは、学校や企業が子どもたちの教育を支えています。基金は企業や個人からの支援実績も公式サイトで年度別に公開しています。
ヴー・アー・ジン奨学基金の実績と信頼性
同基金は1999年の設立以来、ホー・チ・ミン共産青年同盟のもとで活動を継続してきました。2009年には設立10周年を機にベトナム国家主席から労働勲章三等を授与され、2014年の設立15周年には労働勲章一等を受章しています。
活動規模も長期にわたり拡大しています。2024年に公表された資料によると、5つの長期教育プロジェクトでは1,737人の学生が支援を受けました。2025年には基金とVi Hoang Sa – Truong Sa Than Yeuクラブが6,714件の奨学金を給付し、同年度に企業や支援者などから集めた資金・物資・プロジェクト支援は約570億VND(約3億4,500万円)に達しています。
また、公式サイトでは支援団体の一覧や年度別の寄付実績を公開しています。奨学金の選考方法についても基金規約に明記されており、地域の青年団体や教育当局などを通じて候補者を選び、運営委員会が審査する流れが示されています。
参考元:
・「ヴー・アー・ジン奨学基金」公式サイト:Kết quả tài trợ
・新聞「Báo Điện tử Chính phủ」公式サイト:Quỹ Vừ A Dính nhận Huân chương Lao động hạng Nhất
・新聞「Nhan Dan」公式サイト:Hơn 1.700 học sinh, sinh viên thụ hưởng Quỹ học bổng Vừ A Dính
・新聞「Nhan Dan」公式サイト:Chương trình Giao lưu nghệ thuật “Hành trình mùa xuân lên rừng xuống biển năm 2026”
基本情報・問い合わせ

まとめ
教育を受ける機会は、子どもが将来の選択肢を広げるうえで重要な基盤となります。一方、家庭の経済状況や居住地域によっては、本人の努力だけでは学び続けることが難しいケースもあります。
教育格差への対応には、奨学金による経済的な支援だけでなく、子どもが継続して学べる環境を長期的に整える視点も欠かせません。子どもがどこで生まれ育ったかに左右されず、その先の進学や将来を考えられる環境を社会全体で支えることの重要性を示す活動といえるでしょう。