ベトナムでは、学校教育だけでなく、年齢や職業を問わず学び続けられる環境づくりが進められています。経済的な事情を抱える子どもへの就学支援に加え、成人の学び直しやデジタル技術の習得など、学習を取り巻く課題も多様化してきました。
こうしたなか、全国規模で学習奨励や人材育成を推進しているのが、「Hoi Khuyen Hoc Viet Nam(ベトナム奨学推進協会)です。同協会は、奨学金による支援に加え、生涯学習の普及や人材育成に関する活動を全国で進めています。
本記事では、ベトナム奨学推進協会の活動内容や参加・支援方法、これまでの実績について紹介します。

ベトナム奨学推進協会とは?
ベトナム奨学推進協会は、教育の振興や学習奨励、人材育成を目的に、全国規模で活動する社会団体です。1996年2月に設立が承認され、同年10月2日にハノイで設立大会が開かれました。
協会の目的は、国内外に暮らすベトナム人や関係組織をつなぎ、誰もが継続的に学べる社会づくりを後押しすることです。活動範囲は全国に及び、学習奨励や人材育成、学習社会の形成を活動の柱としています。現在の規約は、2022年4月にベトナム内務省が承認したものです。
学校に通う子どもだけを対象とせず、成人を含む幅広い世代の学びを支えている点も特徴です。家庭、地域、職場など日常生活のさまざまな場を学習の拠点と捉え、生涯学習を社会全体へ広げています。
ベトナム奨学推進協会の取り組み紹介
1.奨学金による学習支援

ベトナム奨学推進協会では、学習を続ける人への奨学金や表彰を各地で展開しています。経済的に困難な状況にある学生への援助に加え、学業で成果を上げた学生や、自ら学び続ける成人も支援の対象です。代表的な活動の一つが「Hoc Khong Bao Gio Cung(学びに終わりはない)」奨学金で、2020年から学生や成人の学びを後押ししてきました。
2026年7月にはカントー市で第6回の授与式が開かれ、南部9省・市や中央機関から選ばれた310人が表彰されました。このほか、地方の学習奨励協会や民間企業、各種基金との連携による奨学金も各地で実施されており、学習費用の支援とともに、自学や継続的な学びを評価する機会となっています。
2.生涯学習を地域に広げる活動

同協会は、学校卒業後も学び続けられる環境を整えるため、家庭や地域、職場などを単位とした生涯学習の普及を進めています。その一つが「Cong Dan Hoc Tap(学習する市民)」モデルです。学習習慣や能力を一定の基準に沿って評価する仕組みで、ハノイオープン大学と協力して専用システムを運用しています。
2026年3月には、行政区画の再編に合わせたデータ更新とシステム利用に関する研修を実施しました。ハノイオープン大学から全国34省・市の学習奨励協会をオンラインで結び、システムの利用方法やデータ整備について共有しています。
3.デジタル時代に対応した学習機会の拡大

近年は、デジタル技術の普及に合わせて学習支援の対象を広げています。同協会は、デジタル技能を社会に普及させる「Binh Dan Hoc Vu So(デジタルリテラシー普及運動)」や「Khuyen Hoc So(デジタル学習奨励)」などを推進し、幅広い世代がデジタル技術を学ぶ機会の拡大を図っています。
2026年上半期には、Binh Dan Hoc Vu Soの普及に向け、11の機関・組織と連携プログラムを締結しました。地方でも、Binh Dan Hoc Vu SoとCong Dan Hoc Tapモデルを組み合わせた活動が始まっています。
4.学習成果と人材の顕彰

同協会は、学習や研究、技術開発などで成果を上げた人材を顕彰する活動にも力を入れています。その代表例が「Nhan Tai Dat Viet(ベトナム人材賞)」です。学びによって得られた成果を社会に広く伝え、人材を評価する機会として実施されています。
2025年10月27日にはハノイで第18回の授賞式が開かれ、自学による成果、若手の創造的活動、医療・薬学、デジタル技術、社会への貢献の5部門で表彰が行われました。
ベトナム奨学推進協会への参加・支援方法
会員としての参加
ベトナム奨学推進協会には、個人会員と団体会員の制度があります。
個人の場合、国内外に暮らすベトナム国籍者で、協会の規約に賛同し、学習奨励や人材育成、学習社会の形成に関心を持つ人が加入対象です。団体については、各省・市の学習奨励協会をはじめ、教育や学習奨励に関係するベトナム国内の組織などが対象となります。加入には申請など所定の手続きが必要です。
寄付・協賛による支援
協会の規約では、国内外の個人・組織から法令に基づく支援を受けることが認められています。また、企業や団体が奨学金事業に協力する事例もあり、地域の学習奨励協会を通じた支援も行われています。
ベトナム奨学推進協会の実績と信頼性
ベトナム奨学推進協会は1996年の設立以来、全国へ組織基盤を広げてきました。2025年7月時点では、全国の会員数が2,778万8,277人に達し、人口の28.21%を占めています。また、全国の学習奨励・人材育成基金は合計約4兆VND(約242億円)規模と報告されました。
これまでの活動に対しては、2005年に労働勲章二等、2010年と2015年に労働勲章一等を授与されています。
基本情報・問い合わせ

- 公式サイト: https://hoikhuyenhoc.vn/
まとめ
学ぶ機会は、子どもの就学期間だけで完結するものではありません。技術や働き方が変化するなか、成人になってから新しい知識を身につけたり、地域で学び直したりする機会の重要性も高まっています。
ベトナム奨学推進協会の活動からは、奨学金という経済的な支援に加えて、学習する人を評価し、家庭や地域にも学びの場をつくるという考え方が見えてきます。さらに近年はデジタル技能も対象となり、学習支援そのものの範囲が広がりました。
教育を特定の年代や学校だけに委ねず、生涯を通じて学べる環境を社会のなかにどう築くか。その視点は、変化の速い時代における教育支援のあり方を考えるうえでも重要なテーマといえるでしょう。