日本の海岸では、漂着ごみやプラスチックごみへの関心が高まる中、各地でビーチクリーン活動が広がっています。海岸に流れ着くごみは、景観を損なうだけでなく、海洋生物や漁業、観光、地域の暮らしにも影響を及ぼす課題です。
こうした海ごみの問題に対し、行政、NPO、地域団体、企業、学校、ボランティアなど、さまざまな主体が清掃や啓発を進めています。近年は、海岸でごみを拾うだけでなく、種類を調査する活動、年間を通じて海岸を維持する体制づくり、地域団体同士をつなぐネットワーク構築など、活動の形も多様化しています。
本記事では、日本各地で広がるビーチクリーン活動の中から、一般社団法人JEAN、公益財団法人かながわ海岸美化財団、沖縄クリーンコーストネットワーク(OCCN)の3事例を取り上げ、それぞれの特徴と活動の意義を紹介します。
目次
海岸ごみ問題とビーチクリーンの必要性

海洋ごみは、海岸に漂着したものだけではありません。川や街から海へ流れ込むもの、海上を漂うもの、海底に沈むものなど、さまざまな形で存在しています。特にプラスチックごみは、時間の経過とともに細かく砕け、回収が難しい小さな破片になることがあります。
海岸に流れ着いたごみは、波や風の影響を受けて再び海へ戻ることがあります。そのため、海岸で回収することは、海中へ流出する廃棄物を増やさないための重要な対策です。一方で、清掃だけでは根本的な解決にはつながりません。どのような種類が多いのか、どこから来ているのか、どうすれば発生を減らせるのかを考える視点が必要です。
環境省と日本財団が実施する「海ごみゼロウィーク」でも、海岸だけでなく公園や街中など、内陸での清掃活動が対象とされています。これは、海へ流れ出る前の段階で廃棄物を減らすことが、海洋ごみ対策において重要であるためです。ビーチクリーンは、海を守るための活動であると同時に、日常生活と海のつながりを考えるきっかけにもなります。
取り組みの全体像
日本各地のビーチクリーン活動は、単発の清掃イベントから、調査、啓発、ボランティア支援、行政との連携まで、幅広く展開されています。活動の形は地域によって異なりますが、継続性を高めるうえでは、主に次の3つの視点が重要です。
一つ目は、拾うだけでなく、調べる視点です。回収したごみの種類や数を記録すれば、地域の傾向や発生源を考える手がかりになります。実態を把握することで、発生抑制や啓発活動にもつなげやすくなります。
二つ目は、参加しやすい環境を整えることです。ごみ袋の準備や回収方法、分別ルール、活動場所の調整などが明確であれば、個人や団体がビーチクリーンに参加しやすくなります。初めて参加する人にとっては、こうした支援体制が活動への入口になります。
三つ目は、地域内外で連携することです。海ごみは一つの団体だけで解決できるものではありません。行政、企業、学校、地域住民、観光やマリンレジャーに関わる人たちが情報を共有し、それぞれの立場から関われる体制を整えることが、活動の継続につながります。
団体ごとの具体的な取り組み
以下では、日本でビーチクリーンや海ごみ対策に取り組む3つの団体・ネットワークについて、それぞれの特徴を見ていきます。
一般社団法人JEAN

一般社団法人JEANは、海ごみに関する市民調査やクリーンアップキャンペーン、周知啓発、情報発信などを通じて、海洋ごみ問題の解決に取り組む民間の非営利法人です。活動の大きな特徴は、ただ拾うだけでなく、回収したものの内容を調べ、データとして記録する点にあります。
JEANが主催するクリーンアップキャンペーンには、春のクリーンアップと、秋の国際海岸クリーンアップ(ICC)があります。国際海岸クリーンアップは、世界共通の手法でごみの種類や数を記録し、海ごみ問題の実態を把握する取り組みです。参加者は、海岸や水辺で回収しながら、種類を確認して記録します。
この方法の意義は、清掃活動を一過性の取り組みで終わらせない点にあります。たとえば、食品包装やペットボトル、たばこの吸い殻、プラスチック片など、何が多いのかを把握できれば、地域の生活行動やごみ管理の課題も見えてきます。清掃に調査を組み合わせることで、発生抑制に向けた議論の材料が生まれます。
また、JEANでは、一般参加だけでなく、クリーンアップ会場を運営する「キャプテン参加」の仕組みも用意されています。キャプテンは、実施場所や日時の調整、参加者への案内、安全確認、分別、結果報告などを担います。個人や学校、職場、地域グループなどが主体となって活動を広げられる点も、JEANの特徴です。
ビーチクリーンを「拾う活動」から「知る活動」へ発展させている点で、JEANは日本の海ごみ対策における調査型クリーンアップの代表的な存在といえます。参加者一人ひとりがごみの正体を知ることは、日常生活の見直しにもつながります。
参考リンク
・一般社団法人JEAN 公式サイト
・クリーンアップキャンペーン
・参加の方法
公益財団法人かながわ海岸美化財団

公益財団法人かながわ海岸美化財団は、神奈川県と相模湾沿岸の市町などによって設立された、海岸美化を専門とする団体です。相模湾沿岸の自然海岸を中心に、年間を通じた清掃、美化啓発、美化団体支援、調査研究などを行っています。
同財団の特徴は、ビーチクリーンを一時的なイベントではなく、地域の海岸を維持する仕組みとして運営している点です。海岸は季節や天候、潮の流れによってごみの量や種類が変わります。そのため、継続的に状況を確認し、清掃を行う体制が必要になります。
かながわ海岸美化財団は、ボランティア清掃への支援も行っています。ビーチクリーンをしたい個人や団体に対して、ごみ袋の提供や回収サポートを行い、参加のハードルを下げています。海岸清掃では、拾った後の置き場所、回収担当、分別方法といった実務面が重要です。こうした部分を支える仕組みがあることで、地域の人たちは活動に参加しやすくなります。
また、同財団は海岸ごみの実態調査や処理量の把握なども行っています。清掃と調査を組み合わせることで、どの地域にどのようなものが集まりやすいのかを把握し、より効果的な対策につなげることができます。海岸を守るためには、現場で回収する作業だけでなく、状況を継続的に把握する仕組みも欠かせません。
神奈川県の海岸は、観光やレジャー、地域の暮らしと深く結びついています。その海岸を年間を通して清掃し、ボランティアと連動しながら支える同財団の活動は、地域密着型のビーチクリーンを継続させるモデルケースとして参考になります。
参考リンク
・公益財団法人かながわ海岸美化財団 公式サイト
・海岸清掃事業
・清掃ボランティア募集
沖縄クリーンコーストネットワーク(OCCN)
沖縄クリーンコーストネットワーク(OCCN)は、沖縄の青い海や白い砂浜などの豊かな自然を守りたい人たちによるネットワークです。行政、法人、ボランティア団体、マリンレジャー団体など、さまざまな主体が関わっている点に特徴があります。
沖縄は、美しい海岸やサンゴ礁に恵まれた地域であり、観光やマリンレジャーとも深く結びついています。一方で、海岸には漂着ごみや生活由来のごみが流れ着くこともあり、地域全体で海を守る取り組みが求められます。OCCNは、清掃活動を行う個人や団体をつなぎ、情報共有の場として機能しています。
OCCNの公式サイトでは、参加団体などが主催する清掃活動の予定や結果が掲載されています。開催場所や日時、活動内容が共有されることで、関心を持った人が参加しやすくなります。また、企業や団体が海浜清掃を実施した際には、活動情報を発信する場としても活用されています。
さらに、登録した個人や団体に対して、軍手やごみ袋、のぼりなどの清掃用具の提供または貸し出しも行われています。ビーチクリーンを継続するには、活動を呼びかけるだけでなく、実際に動き出すための道具や情報が必要です。OCCNのようなネットワークは、地域に点在する活動をつなぎ、継続的な取り組みに育てる役割を担っています。
沖縄の海を守る活動は、観光地としての魅力を維持するだけでなく、地域の自然環境や暮らしを守ることにもつながります。OCCNの取り組みは、行政や企業、地域団体、ボランティアがそれぞれの立場から関われる地域ネットワーク型のビーチクリーン事例といえます。
参考リンク
・沖縄クリーンコーストネットワーク(OCCN)公式サイト
・クリーンビーチ予定
・クリーンビーチ結果報告&お知らせ
活動を広げるための参加導線と地域連携
ビーチクリーン活動を広げるには、関心を持った人が実際に参加できる導線を整えることが重要です。清掃場所、集合時間、持ち物、分別方法、回収方法、安全上の注意点などが明確であれば、初めての人でも参加しやすくなります。
また、活動を長く続けるには、主催者だけに負担が偏らない仕組みも必要です。学校や企業、地域団体、自治体、観光事業者などが役割を分担できれば、清掃活動は単発のイベントではなく、地域で海を見守る仕組みになります。
今回取り上げた3事例には、それぞれ異なる特徴があります。JEANは、ごみを調べてデータ化することで、発生抑制につなげる視点を示しています。かながわ海岸美化財団は、通年清掃とボランティア支援によって、地域の海岸を継続的に支える仕組みを整えています。OCCNは、沖縄の多様な主体をつなぎ、活動予定や結果を共有するネットワークとして機能しています。
これらの事例に共通しているのは、清掃にとどまらず、参加者が海ごみの問題を知り、次の行動につなげられるようにしている点です。ビーチクリーンは、回収活動であると同時に、地域の人が海との関わり方を考える機会にもなります。
まとめ
海ごみ対策を継続するには、清掃の場を増やすだけでなく、調査、支援、情報共有を組み合わせることが重要です。日本各地で広がるビーチクリーン活動は、海岸に流れ着いたごみを拾う活動から、発生源を考え、地域で海を守る仕組みを育てる取り組みへと発展しています。
一般社団法人JEANは、調査型クリーンアップを通じて海ごみの実態を記録し、発生抑制につなげる活動を行っています。公益財団法人かながわ海岸美化財団は、年間を通じた海岸清掃とボランティア支援によって、地域の海岸美化を支えています。沖縄クリーンコーストネットワーク(OCCN)は、行政、法人、ボランティア団体、マリンレジャー団体などをつなぎ、沖縄の海を守るネットワークを築いています。
海岸ごみの問題は、海の近くに住む人だけの課題ではありません。街で出たごみが川を通じて海へ流れ込むことを考えれば、内陸に暮らす人にとっても身近な問題です。だからこそ、ビーチクリーンは海辺での活動にとどまらず、日々の暮らしの中で廃棄物を減らす意識へとつなげることが大切です。
一つひとつの清掃活動は小さく見えるかもしれません。しかし、各地で継続される取り組みが重なれば、海岸の未来を守る大きな力になります。拾うこと、調べること、支えること、つながることを通じて、ビーチクリーン活動はこれからも地域の海を守る重要な役割を担っていきます。
