治療や手術が必要であっても、経済的な事情から十分な医療を受けることが難しい人々がいます。とりわけ、手術や長期治療を伴う病気では、医療費が患者本人だけでなく家族の生活にも大きな負担となります。
こうした患者と医療機関、支援者をつないでいるのが、ホーチミン市貧困患者支援協会(Hoi Bao Tro Benh Nhan Ngheo TP.HCM)です。同協会は1994年の設立以来、企業や個人から寄せられた資金を活用し、治療費の援助をはじめ、車いすの提供や奨学金、生活面での支援などへ活動の幅を広げてきました。
本記事では、ホーチミン市貧困患者支援協会の主な活動、参加・支援方法、これまでの実績について紹介します。

ホーチミン市貧困患者支援協会とは?
ホーチミン市貧困患者支援協会の前身は、治療費を負担することが難しい患者を支える目的で設立されたホーチミン市無料病院支援協会です。1993年12月に設立が提案され、翌1994年1月29日に設立総会が開かれました。その後、1998年7月に現在の名称へ変更されています。 協会は寄付や協賛を募り、医療機関と連携しながら患者の治療につなげる役割を担ってきました。現在は、先天性心疾患の手術、白内障などの眼科手術、小児がん患者への援助に加え、車いすの提供、健康保険証の支給、奨学金、患者と付き添い家族への無料の食事など、複数の事業を展開しています。 2026年には、政治・社会団体などで構成されるベトナム祖国戦線のホーチミン市組織である「ホーチミン市ベトナム祖国戦線委員会」の直属組織へ移行し、新たな体制で2026~2031年期の活動を開始しました。
ホーチミン市貧困患者支援協会の取り組み紹介
1.先天性心疾患の手術費助成

先天性心疾患を抱える子どもへの手術費助成は、同協会が長年続けている主要事業の一つです。経済的な理由から手術費の負担が難しい家庭に対し、企業や個人から協賛を募り、医療機関と連携して治療につなげています。 2026年4月2日には、ホーチミン市小児病院で、カマウ、カントー、アンザン、ドンタップ、タイニン、クアンガイ、ホーチミン市などから治療に訪れた10人の子どもを対象に、手術費の支援が行われました。この支援では物流企業ITL(アイティーエル)の協力により、対象となった10人の心臓手術費が全額賄われています。
2.白内障患者への無料眼科手術

白内障により視力が低下した低所得者を対象に、無料の眼科手術を実施しています。同事業は1997年、100人への手術から始まり、2023年6月には累計70万件に達しました。
2024年5月9日には、ホーチミン市の交通運輸病院で、ホーチミン市のほか、ベンチェ、ロンアン、タイニン、ドンナイなどから訪れた患者が無料手術を受けました。協会は病院や支援者と連携し、同日の事業を運営しました。
3.小児がん患者への治療費援助

長期間の治療を必要とする小児がん患者に対しては、患者の家庭状況や治療内容に応じて費用面の援助を行っています。
2026年6月1日には、ホーチミン市小児病院で、銀行のACB(エーシービー)と協会が連携し、治療中の小児がん患者40人を支援しました。両者は2025年12月から2028年12月までの支援プログラムを設けています。 協会による小児がん患者への援助は2020年9月に始まり、2026年6月時点で、ホーチミン市小児病院やホーチミン市腫瘍病院などで治療を受ける926人の子どもに対し、延べ1,000回を超える支援が行われました。治療内容や家庭の事情によっては、同じ患者が複数回援助を受けるケースもあります。
ホーチミン市貧困患者支援協会への参加・支援方法
寄付による支援
同協会は、個人や企業からの寄付を受け付けています。公式サイトには、ベトナムドンと米ドルの銀行振込口座が掲載されており、寄せられた資金は患者への医療援助や各種社会支援事業に活用されています。
企業・団体との協働
企業や団体との連携も、協会の活動を支える重要な仕組みです。心臓手術や小児がん治療、眼科手術などでは、企業が事業単位で資金を提供し、協会や医療機関と連携して患者を支えるケースもあります。 協賛や共同事業を検討する場合は、公式サイトの問い合わせフォーム、電話、メールから協会へ相談できます。
ホーチミン市貧困患者支援協会の実績と信頼性
2026年7月に公表された2020~2025年期の活動報告によると、同期間に1,871人の子どもが先天性心疾患の無料手術を受け、12万3,800人以上が眼科手術を受けました。小児がん患者774人への治療費援助に加え、患者と付き添い家族には2,500万食を超える無料の食事も提供されています。
そのほか、同期間に低所得世帯への健康保険証2万500枚、車いす・手こぎ式車いす1,564台、奨学金1万210件などを提供しました。また、設立30周年を迎えた2024年時点では、先天性心疾患の手術が累計1万300件以上、無料眼科手術が71万件以上に達したと報告されました。
この2事業については、ベトナム記録機構「VietKings(ベトキングス)」から、それぞれ国内最多記録として認定を受けています。同年の記念式典では、ホーチミン市人民委員会から長年の功績をたたえる表彰旗が贈られ、長年活動に携わった団体や個人にも各種表彰が行われました。
基本情報・問い合わせ

まとめ
ホーチミン市貧困患者支援協会は、企業や個人から寄せられる寄付・協賛を、医療機関と連携しながら患者への具体的な支援につなげてきました。
医療費を患者や家族だけで抱えることが難しい状況に対し、民間から集まる資金を治療へ結び付ける仕組みを長年維持してきたことは、同協会の活動を支える基盤となっています。行政、医療機関、企業、個人がそれぞれの立場から関われる受け皿として、今後も地域の医療・生活支援を支える役割が求められます。