日本は長年にわたり、先進的な水処理技術の開発と環境保全に取り組んできました。こうした技術は高い信頼性と環境への配慮が評価され、世界各地で活用されています。
東南アジアのなかでもベトナムは、急速な経済成長に伴い工業排水や生活排水による水質悪化が深刻な課題となっています。これを受け、多くの日本企業がCSR(企業の社会的責任)活動として技術支援を行うとともに、政府のODA(政府開発援助)事業による持続可能なインフラ整備も進められています。
本記事では、企業CSRやODAによりベトナムの水質改善に成果を上げている3つの事例を取り上げ、日本の技術協力が現地の水環境向上に果たす役割と成功の軌跡を紹介します。

目次
ベトナムの水質問題と日本の技術協力の役割
ベトナムは近年、目覚ましい経済成長を遂げ、製造業を中心に東南アジアでの存在感を高めています。工業団地の拡大や都市の発展により国民の生活水準は向上しましたが、排水処理など環境インフラの整備は追いついていません。そのため経済発展と環境保全の間に大きなギャップが生じ、水質悪化が深刻な社会問題となっています。
多くの地域で生活排水が処理されないまま河川や沼に流され、さらに染色工場や繊維工場からの工業排水が加わり、水質汚染や生態系の破壊を引き起こしています。悪臭やヘドロの蓄積などの問題が地域住民の暮らしに影響を及ぼし、衛生環境の悪化を招いています。
こうした課題に対し、日本企業はCSR活動の一環として、高度な水処理技術を提供しています。また政府はODA事業を通じて、持続可能な水環境インフラの整備支援や技術移転、人材育成を進めています。企業の技術力と政府の制度的支援が連携することで、ベトナムの水環境改善に向けた取り組みが加速しています。
事例①:GEC × WEF技術開発 - 染色工場の排水を活性酸素で分解

環境保全活動を支援する 「地球環境センター(GEC)」と水処理企業を提供する「WEF技術開発」は、ホーチミン市近郊の染色工場排水問題に取り組んでいます。染色工場から排出される排水には分解が難しい色素成分が含まれ、河川汚染の大きな原因となっています。
WEF技術開発は、活性酸素を利用した酸化分解技術を導入し、有機汚染物質を効率的に分解するとともに環境負荷の軽減を目指しています。同事業は環境省の「令和7年度アジア水環境改善モデル事業」に採択され、GECが代表事業者として推進しています。
ベトナムの繊維染色産業における難分解性有機物や着色水の除去を課題とし、活性酸素技術によって排水基準の達成と周辺水域の改善を目指しています。2025年度は実現可能性調査を実施し、次年度以降に実証事業へと進む計画です。GECは現地での技術指導や運用管理も担当し、持続可能な運用体制構築に努めています。
参考リンク
- 「地球環境センター (GEC) 」公式サイト:https://gec.jp/jp/post-5594/
- 「WEF技術開発」公式サイト:https://new.aoyama-wefit.com/2025/06/09/
事例②:メタウォーター社のホイアン市下水処理施設構築

浄水場や下水処理場の建設などを担う 「メタウォーター」は、日本政府のODA事業の一環として、ベトナム中部の世界遺産の街ホイアン市に下水処理施設を整備しました。省エネルギー型の水処理技術「前ろ過散水ろ床法(PTF法)」をベトナムで初導入し、2018年11月に竣工しています。
PTF法は微生物の働きと重力流を活用し、薬品や機械動力の使用を最小限に抑えた持続可能な技術です。これによりエネルギーコストや運転負荷が低減され、現地での維持管理にも適しています。施設は1日最大2,000㎥の処理能力を持ち、住民や観光客の生活排水を効果的に浄化しています。
同プロジェクトは日本のODAによる技術移転の成功例であり、ベトナムの地域事情に即した環境インフラ整備として評価されています。今後もこうした官民連携の技術支援が東南アジア地域の水環境改善に貢献すると期待されています。
参考リンク
- 「 メタウォーター 」公式サイト:https://www.metawater.co.jp/news/2018/11/jv.html
事例③:滋賀県 × 県内企業連携 - 琵琶湖のノウハウを活かしたベトナムの水質改善支援

滋賀県は、琵琶湖の水質改善に培った豊富なノウハウを生かし、県内の中小企業と連携してベトナムにおける水質改善支援プロジェクトを展開しています。地域の技術力と行政の支援を結集し、持続可能な水処理技術の導入と現地での運用サポートを進めることで、環境課題の解決に取り組んでいます。
同取り組みには、浄化槽の設置および維持管理による水環境改善に貢献したいと考えている「大吾産業」、水道用関連機器の開発製造を通じての支援を目指す「協和工業」、ベトナムでの排水調査や意識調査を実施し、現地の環境負荷軽減に寄与している「ヴァンテック」など、県内企業の参画が期待されています。
滋賀県の行政支援とこうした県内企業の官民連携は、ベトナムの水環境改善における重要なモデルケースとなっており、今後の持続的な環境技術の普及と地域連携の強化が期待されています。
参考リンク
水質改善に向けた日越連携の可能性
日本の先進的な水処理技術とベトナムの実情に即した運用が融合することで、現地の水質改善は今後さらに加速すると見込まれます。こうした日越連携の深化は、環境インフラの強化だけでなく、両国間の技術協力や経済交流の促進にもつながります。今後は、現地ニーズに対応したカスタマイズ技術の展開や人材育成を通じて、持続的な環境保全と社会的価値の創出が期待されます。
まとめ:持続可能な水環境を目指して

ベトナムの水質改善における日本の貢献は、企業のCSR活動やODA支援を通して、現地課題に即した実践的な解決策を生み出しています。官民の連携によって技術や知見が融合し、地域の環境改善や住民の生活は確実に向上します。今回紹介した事例は、国際的な環境協力のモデルケースとなるとともに、今後の持続可能な社会の実現に向けて重要な役割を果たすでしょう。