ホーチミン市のごみ問題。都市ごみ処理の現状と循環型社会への転換を支える3つの取り組み

ホーチミン市は、ベトナム最大の経済都市として人口と産業が集積する都市です。急速な都市化と経済成長は、市民生活の利便性向上や消費の拡大をもたらしてきましたが、その一方で、都市インフラに対する負荷も着実に増大しています。なかでも、都市ごみの処理問題は、環境負荷の問題にとどまらず、都市の持続的な運営そのものを左右する重要な課題として顕在化しています。

都市ごみは、発生量だけを示すものではありません。行政の管理体制や処理インフラの整備状況、市民の行動様式といった要素も反映する指標です。ホーチミン市が今後も大都市として成長を続けていくためには、ごみ処理を単なる環境問題として切り離すのではなく、多様な主体が関与する都市運営上の構造的課題として捉える視点が不可欠となります。

本記事では、ホーチミン市における都市ごみ問題の現状と、現在の処理体制が抱える課題を整理します。そのうえで、現場運営、処理インフラ、市民参加という3つの視点から、都市ごみ問題に取り組む主要な組織の事例を紹介します。

目次
  1. ホーチミン市が直面する都市ごみ問題の現状
  2. 都市ごみ問題に関わる主な組織と取り組み
  3. 事例①:CITENCO ― 都市ごみ処理を日常的に支える現場運営の中核
  4. 事例②:Vietnam Waste Solutions (VWS) ― 大量廃棄物を受け止める処理インフラの基盤
  5. 事例③:GreenHub ― 市民の行動変容を通じて補完される都市ごみ管理
  6. 多主体の連携が拓く持続可能な都市ごみ管理
  7. まとめ:協働によって築くホーチミン市の都市ごみ管理の将来像

ホーチミン市が直面する都市ごみ問題の現状

ホーチミン市では、人口増加や都市化の進展に伴い、都市ごみの発生量が増加しています。そのなかで、発生段階での分別が十分に定着していないことや、処理能力や運営体制への負荷が、都市ごみ管理における課題として顕在化しています。

また、焼却発電や高度なリサイクル技術への転換には、継続的な投資と安定した運営体制が求められます。急増するごみ量に対応しながら処理方法を段階的に転換していくことは容易ではなく、現行の枠組みのもとでは、一定の時間を要するのが実情です。

こうした状況を踏まえると、ホーチミン市の都市ごみ問題は、技術や資金の整備に加え、行政、事業者、市民といった複数の主体が関与する運営のあり方を含めて捉える必要がある現状にあると言えるでしょう。

都市ごみ問題に関わる主な組織と取り組み

都市ごみ問題への対応は、現場での運営、処理インフラの維持、市民の関与といった複数の要素によって支えられています。以下では、こうした役割を担う組織の事例を通じて、ホーチミン市の都市ごみ管理の実態を見ていきます。

事例①:CITENCO ― 都市ごみ処理を日常的に支える現場運営の中核

画像引用元: 「CITENCO」公式サイト

ホーチミン市における都市ごみ処理の中核を担っているのが、市の出資を受ける都市環境公社CITENCO(シテンコ)です。同社は、ごみの収集および運搬、ならびに最終処分場の運営を一体的に担い、市内で発生する都市ごみ管理の基盤を長年にわたり支えてきました。

人口密度の高い市街地での収集作業や交通事情への対応、人員や車両の確保といった課題を抱えながらも、CITENCOは都市ごみ処理を日常的に機能させてきました。こうした継続的な現場運営は、都市機能の安定を下支えする重要な役割を果たしています。

分別が十分に定着していない状況では、リサイクルや高度処理への移行には限界が生じます。それでもなお、都市ごみ管理が日常的に成立している事実は、CITENCOが都市運営の根幹を下支えする実務主体であることを物語っています。

参考リンク

・「CITENCO」公式サイト:https://www.citenco.com.vn

事例②:Vietnam Waste Solutions (VWS) ― 大量廃棄物を受け止める処理インフラの基盤

画像引用元: 「VWS」公式サイト

ホーチミン市における都市ごみ管理では、収集されたごみを安定的に処理し、最終処分につなげる体制が不可欠です。ごみ発生量が増加する大都市においては、個別の対応ではなく、大規模な処理拠点を軸とした運営が、都市機能を支える前提条件となります。

Vietnam Waste Solutions(ベトナムウェイストソリューションズ、VWS)は、ホーチミン市周辺は、ホーチミン市周辺で都市ごみを集中的に受け入れる処理施設を運営し、最終処分を含む処理工程を担ってきました。大量の廃棄物を継続的に受け入れる体制は、都市ごみ管理の基盤として重要な役割を果たしています。

こうした処理インフラの存在によって、都市ごみ管理は日常的に成立しています。VWSの事例は、都市ごみ問題が収集だけで完結するものではなく、処理施設というインフラによって初めて都市運営として機能することを示しています。

参考リンク

・「VWS」公式サイト:https://vnwaste.com

事例③:GreenHub ― 市民の行動変容を通じて補完される都市ごみ管理

画像引用元: 「GreenHub」公式サイト

処理インフラや運営体制が整備されていても、発生段階での分別やごみ削減が進まなければ、都市ごみ問題の解決には市民一人ひとりの行動が欠かせません。分別やごみ削減が発生段階で定着しなければ、処理や運営の負荷は構造的に解消されません。

環境NGOであるGreenHub(グリーンハブ)は、地域コミュニティや学校を対象に、ごみ削減や分別、リユースに関する啓発や実践プログラムを通じて、市民の意識と行動の変化を促す活動を行っています。制度やインフラでは直接担いきれない領域において、行動変容を支える役割を果たしています。

こうした取り組みは、都市ごみ管理を社会の中で持続的に機能させるための補完的な基盤となります。GreenHubの事例は、都市ごみ問題が行政や事業者だけで完結するものではなく、市民参加によって初めて支えられる構造であることを示しています。

参考リンク

・「GreenHub」公式サイト:https://greenhub.org.vn

多主体の連携が拓く持続可能な都市ごみ管理

ホーチミン市の都市ごみ問題は、処理能力の確保だけで解決できるものではありません。現場での運営、処理インフラの維持、そして市民一人ひとりの行動が相互に関わることで、都市ごみ管理は全体として機能します。

都市ごみ処理の現場運営を支えているのが、CITENCOによる日常的な収集および運搬です。一方、収集されたごみを安定的に受け入れる体制として、VWSが担う大規模処理施設は、都市ごみ管理の基盤を形成しています。さらに、市民の行動変容を後押しする役割として、GreenHubのような環境NGOの取り組みが、運営やインフラだけでは補いきれない領域を支えています。

これらの事例は、都市ごみ管理が単なる処理工程の集合ではなく、複数の主体がそれぞれの役割を果たすことで成立する都市運営上の構造的な課題であることを示しています。

まとめ:協働によって築くホーチミン市の都市ごみ管理の将来像

ホーチミン市が直面する都市ごみ問題は、人口増加や経済成長、処理インフラの制約、現場運営や市民行動を取り巻く課題が重なり合って生じている構造的な問題です。これに対応するためには、現場での運営、処理インフラの維持、そして市民一人ひとりの参加が相互に補完し合う体制を構築していくことが求められます。

本記事で紹介した3つの事例は、それぞれ異なる立場から都市ごみ管理を支える役割を示しています。これらを個別の取り組みにとどめるのではなく、都市全体で共有できる方向性へとつなげていくことが、持続可能な都市ごみ管理への重要な一歩となります。