ベトナムで進む海亀の産卵地保護。国内外3つの団体が支える海洋保全の最前線

近年、東南アジア各国では海洋生態系の保全が重要課題として注目されています。特にベトナムでは、沿岸開発や観光の拡大に伴い、海亀の産卵地である砂浜やサンゴ礁が減少しています。海岸侵食や光害、海洋ごみなどの影響により、生態系のバランスが崩れ、個体数の減少が懸念されています。

こうした状況を受け、国内外の団体や企業が保全活動を強化しています。地域住民や観光業者と協働し、環境教育や生態系修復を進める動きが広がっており、海亀保護は単なる自然保全にとどまらず、持続可能な地域づくりの象徴として注目されています。

本記事では、ベトナム沿岸で進む海亀保護の現状と、現場で活動する3つの団体の取り組みを紹介します。生態系保全、観光との共生、そして地域社会の意識変化という3つの視点から、その実践を見つめていきます。

目次
  1. 海亀保護の現状と課題
  2. 国際・国内団体の取り組み
    1. ① 国際自然保護連合ベトナム事務所(IUCN Vietnam)
    2. ② シックスセンスズコンダオ(Six Senses Con Dao)
    3. ③セーブベトナムズワイルドライフ(Save Vietnam’s Wildlife)
  3. 今後の展望と連携の可能性
  4. まとめ:海亀が産卵する未来へ─人と自然が共生する新たなモデル

海亀保護の現状と課題

ベトナムには、アオウミガメやタイマイなど5種の海亀が生息しています。しかし近年、沿岸開発や違法捕獲、海洋汚染の影響により、産卵地の減少が進行しています。特に観光地として人気の高いニャチャン湾やフーコック島、コンダオ諸島では、人工照明や観光船の往来によって産卵行動が妨げられる事例も報告されています。

こうした課題を受け、ベトナム政府は2001年に「国家海亀保護行動計画」を策定し、IUCN(国際自然保護連合)など国際機関と連携して保全体制の整備を進めています。それでも、開発圧力の高まりや気候変動の影響などにより、海亀の生息環境には依然として多くの課題が残されています。

国際・国内団体の取り組み

海亀の産卵地を守る取り組みは、ここ数年で質・量ともに大きく拡大しています。政府による保護政策の強化に加え、企業や地域社会、研究機関、そして海外の環境団体からの支援も活発になっています。こうした多様な主体がそれぞれの専門性を生かしながら協働することで、保全活動の基盤が広がりつつあります。

特に観光業界では、CSRの一環としてリゾート施設が孵化支援や環境教育に取り組むなど、観光と自然保護を両立させる動きが見られます。これらの取り組みは、ベトナムの海亀保護を国家レベルの環境政策と結びつけ、持続可能な地域づくりを支える柱の一つとなっています。以下では、こうした流れを現場で支える3つの団体の具体的な活動を紹介します。

① 国際自然保護連合ベトナム事務所(IUCN Vietnam)

「IUCN Vietnam」は、海亀保護の国際的な枠組みを主導する団体です。2001年以降、ベトナム政府と協力し、「海岸生態系の回復と海亀産卵地保全プログラム」を推進しています。調査やモニタリングを重ねることで、産卵地の特定や生息環境の改善を進めてきました。

さらに、地方自治体や学校と連携して環境教育を進め、学生や観光関係者を対象にしたワークショップで海亀保護の重要性を伝えています。こうした継続的な活動が、地域社会の理解を深め、持続可能な保全モデルの構築にも寄与しています。

参考リンク
IUCN Vietnamの活動詳細:A Global Strategy for the Conservation of Marine Turtles

② シックスセンスズコンダオ(Six Senses Con Dao)

高級リゾート「Six Senses Con Dao」は、ベトナム南部のコンダオ諸島で海亀保護活動を行っています。同リゾートでは「レッツゲットクラッキング/Let’s Get Cracking」プログラムを通じ、地元の国立公園管理局と協力し、海亀の卵を保護して孵化した子ガメを自然に帰す取り組みを続けています。これまでに3万匹を超える子ガメが海へと放たれています。

また、観光客向けに体験型の保全教育を導入し、リゾート滞在を通じて環境意識を高める仕組みを整えています。こうした取り組みは、観光と自然保護が共存できるモデルとして高く評価されています。

参考リンク
・Six Senses Con Daoの活動詳細①:Sustainability at Con Dao

・Six Senses Con Daoの活動詳細②:Turtle Hatchling Release

③セーブベトナムズワイルドライフ(Save Vietnam’s Wildlife)

「Save Vietnam’s Wildlife(SVW)」は、ベトナム北部に拠点を置く野生動物保護NGOです。森林生態系の保全で知られていますが、近年は海洋生物の救護やリハビリ活動にも取り組み、海亀や海鳥の保護啓発を進めています。地元の学校やコミュニティセンターでは、子どもたちに生物多様性を守る意識を育む教育活動を実施しています。

また、国内外の研究機関と連携し、野生動物の密猟防止や違法取引の根絶を目指す政策提言にも力を注いでいます。SVWの活動は、海亀を含む海洋と陸上の双方を視野に入れた総合的な保全モデルとして注目されています。

参考リンク
SVWの活動詳細①:Releasing 65 big-headed turtles

SVWの活動詳細②:Rescue 59 critically endangered big-headed turtles in Nghe An

今後の展望と連携の可能性

ベトナムでは、国際団体・企業・市民社会の連携により保護活動が着実に進展しています。一方で、沿岸開発の加速や観光による光害、プラスチックを含む海洋ごみの増加など、海亀の生息環境を脅かす要因は依然として複雑です。

今後は、AIや衛星データを活用したモニタリング、地域住民による保護ネットワークの形成、環境教育の強化などが重要となるでしょう。また、「ワンプラネット・ワンオーシャン/One Planet – One Ocean」という理念のもと、国際的な連携をさらに深めることが求められます。この言葉は、国連海洋会議(UN Ocean Conference)などで共有されている国際的なスローガンの一つであり、「地球上のすべての海はつながっており、その保全は人類共通の責任である」という考えを示しています。

さらに、日本との協働にも大きな可能性が広がっています。日本は長年にわたり、海洋環境の研究・防災・生態系再生の分野で高い技術力と実績を有しており、これらの知見はベトナム沿岸の保全活動にも応用が可能です。たとえば、衛星観測技術を活用した産卵地のモニタリングや、持続可能な観光開発のノウハウ共有、企業のCSRを通じた環境教育支援など、多面的な連携が期待されます。

こうした日越間の協働は、単なる技術移転にとどまらず、地域社会の自立的な保全体制を支えるパートナーシップとして機能するでしょう。海亀をはじめとする海洋生物の保全を通じて、人と自然が共生する社会の実現に向けた新たな国際連携モデルが築かれつつあります。

まとめ:海亀が産卵する未来へ─人と自然が共生する新たなモデル

ベトナムにおける海亀保護の取り組みは、自然環境の再生と地域社会の持続可能な発展を両立させる新たな挑戦です。IUCN Vietnamによる政策支援、Six Senses Con Daoの観光と共生する保全活動、そしてSave Vietnam’s Wildlifeの教育・啓発を通じ、保全の輪は確実に広がっています。

これらの活動は、単なる環境保護を超えて、人と自然が共に生きる社会を築く基盤となっています。今後も国際社会と地域の協働が進むことで、海亀が安心して産卵できる浜辺を未来へと受け継ぐ持続可能な仕組みが定着していくことが期待されます。