日本はこれまで、ICT(情報通信技術)を活用した教育支援や人材育成を継続的に進めてきました。こうした取り組みは、企業のCSR(企業の社会的責任)活動や政府のODA(政府開発援助)を通じて発展途上国にも広がり、教育格差の是正や地域社会の発展に貢献しています。
近年、ベトナムではデジタル教育の必要性が高まる一方で、農村部ではインフラや機材の不足が課題となっています。これを受け、多くの日本企業がCSR活動として学校への機材提供やICT教育支援を行い、日本政府もODAを通じて教育インフラの整備やデジタル人材育成を支援しています。
本記事では、企業とODAの取り組みが相互に補完しながらベトナムのICT教育発展に寄与している3つの事例を紹介し、教育の平等化と人材育成に向けた日本の貢献を取り上げます。

目次
ベトナムのICT教育課題と日本の支援の役割
急速な経済成長を遂げるベトナムでは、デジタル化の進展に伴い、次世代を担うICT人材の育成が喫緊の課題となっています。特に地方部では、通信環境や教育機材の整備が遅れており、都市部との学習格差が拡大しています。
日本企業は自社の技術やノウハウを活かし、教育現場におけるICT環境整備を支援しています。CSR活動の一環としてPC教室の設置や教員研修を実施し、子どもたちが情報リテラシーを身につけるための基盤づくりを進めています。また、日本政府はODAを通じて教育省(MOET)と連携し、教育デジタル化の推進や学校ネットワーク整備など、教育基盤の強化を支えています。
事例①:サトー - 山間部の子どもたち向け電子図書館を設置
日本のラベルプリンタ技術で知られるSATO(サトー)グループは、自動認識ソリューションを中心とした事業を展開する一方、社会貢献活動にも力を入れています。ベトナム法人では、教育インフラが十分に整っていない北部山間地域を対象に、現地NPO法人「イエウヴングカオ/Yeu Vung Cao」と連携した教育支援活動を進めています。
この取り組みでは、ソーラー発電を活用した学習支援設備の設置を通じて、電力や通信が限られた地域の子どもたちがデジタル教材に触れられる環境づくりを行っています。再生可能エネルギーを活用した教育支援として持続性が高く、地域の学びの拠点づくりに寄与しています。
SATOの取り組みは、民間企業が地域NPOと協働しながら教育課題の解決を目指す実践例です。電力や通信環境が限られた地域でのデジタル学習支援として、ベトナム政府の教育デジタル化方針にも通じる先進的なモデルとなっています。
参考リンク
- 「SATO Asia Pacific Vietnam」公式サイト:CSR Activities
事例②:富士通 - 学校向けコンピュータ教室の整備

富士通ベトナムは、北部ランソン省にあるマウソン民族少数派寄宿中学校に対し、コンピューターや寝具マット、奨学金を寄贈しました。この取り組みは、ダオ族を中心とする82人の生徒にテクノロジーへのアクセスを提供し、より快適で学びやすい環境を整えることを目的としています。
寄贈によって、生徒たちはICT機器を活用した学習の機会を得て、デジタル教育を通じて将来への可能性を広げています。教育格差が残る山岳地域でのこうした支援は、地域社会全体の学習環境向上にもつながっています。
富士通は「テクノロジーの力で社会に前向きな変化をもたらす」という理念のもと、事業を展開する地域社会への貢献を重視しています。同活動は、日本政府が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)の教育支援方針にも合致しており、民間企業として自立的に地域の教育格差解消を支える取り組みです。
参考リンク
- 「富士通ベトナム」公式Facebookページ:Empowering bright young minds in Vietnam’s highlands!
事例③:キヤノン ― 子どもたちに学ぶ場と希望を提供

キヤノンベトナムは、2007年に開始した「キヤノンフレンドシップスクールチェインプロジェクト/Canon Friendship School Chain Project」を通じて、地方の教育施設整備やICT環境の導入支援を進めています。老朽化した校舎の改修に加え、パソコンの寄贈やプリンターの設置などを行い、子どもたちが快適に学習できる環境を提供しています。
さらに、社員ボランティアによる教育支援活動も定期的に実施しています。授業では、子どもたちがタイピングや写真編集などを学び、デジタル技術を通じて自己表現の幅を広げる機会を得ています。
こうした活動は、地域社会との信頼関係を深めるとともに、企業の社会的責任を果たす好例として国内外で高く評価されています。
参考リンク
- 「キヤノンベトナム」公式サイト:Responding to society as a leading enterprise
- 「Canon Global」公式サイト:社会文化支援活動
教育格差を縮める日越協力の可能性
ICT教育支援は、単なる技術導入にとどまらず、教育の質を高め、人材の自立を促す取り組みとして注目されています。日越両国の官民連携が進むことで、教育機会の平等化が実現し、地域間格差の是正や産業競争力の向上にもつながると期待されています。
特に、デジタルリテラシーを備えた若年層の増加は、ベトナム社会全体の持続的な発展を支える基盤となるでしょう。
まとめ:ICT教育が拓く持続可能な未来

ベトナムのICT教育支援における日本の取り組みは、企業のCSR活動と政府のODAが相互に補完し合うことで着実に成果を上げています。教育機会の拡大や人材育成、地域の情報格差解消などの効果は、単なる支援を超えて社会的価値を創出しています。
今後も、企業の技術力とODAによる制度的支援が連携することで、教育を軸とした国際協力の新たなモデルとして、ICTが持続可能な未来を切り拓く原動力となることが期待されます。
